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平成 23年 3月 1日 更新


理想ラップ理論 (Ideal Lap Time Theories


(T)理想ラップ理論とは

各馬の走破タイムを前半3F・中盤・上り3Fの3つの区分に分け、そのラップバランスを考える事で その馬の適性や能力の本質を考える予想理論です。


(U)理想ラップの定義

(U−1)現実ラップ

終了した各レースにおいて、上位3着までの前半3F・中盤・上り3Fをそれぞれ平均したものを 現実ラップ (RLT ; Real Lap Time とします。
この現実ラップを各々のレースの理想的なラップと考え、それに近いラップで走った馬が好走しやすかったと考えるのが、本論の第一歩となります。

(U−2)理想ラップ

過去数年のレース(重賞は過去10年)をサンプルに、「競馬場」・「コース」・「走破時計区間」毎に現実ラップを集計し、その平均を考えたものを 理想ラップ(ILT ; Ideal Lap Time とします。

例えば、「東京」「芝1800m」「1.48.0〜1.48.4」の理想ラップは、前半3F、中盤3F、上り3Fの順に
36.6 - 36.9 - 34.7
となります。

現実ラップと理想ラップ共に 理想的なラップと考えるのが 本論の前提ですが、この2つの違いを書くと以下のようになります。

種類 サンプル数 用途
理想ラップ 過去数年の該当条件全てのレース 予想段階で使用
現実ラップ 該当する1レース 結果分析で使用

理想ラップが 過去数年の該当条件全てのレースをサンプルに集計したもので、予想段階で使用する未来的なものであるのに対して、現実ラップは過去的なものになり、そのレースを分析するために考えるものになります。

例えば、上の例を用いて、「東京」「芝1800m」のレースが「1.48.0〜1.48.4」の決着になりそうだと予測した時、「36.6 - 36.9 - 34.7」のラップで走る事が理想だと考え、そのラップで走れそうな馬を考えます。
ところが、レースが終了した結果、現実ラップ(上位3頭の平均)が「
37.6 - 36.9 - 33.7」のようになってしまった場合、「このレースは「37.6 - 36.9 - 33.7」で走るのが理想だった。」と考える事とします。
そう考えるのは、各々レースによって 気象状況(雨や風など)や馬場状態、ペースの相違があると考えるからです。

そして、ここで注意が必要なのは、「競馬場」・「コース」・「走破時計区間」だけで集計しているという点。
この場合、当然「東京」「芝1800m」「1.48.0〜1.48.4」の全ての条件を満たしたサンプルの平均が表示されています。
「馬場状態」や「コース形状」などの要素は考慮していません。
「1.48.0〜1.48.4」の区間内なら、未勝利でも馬場が悪い時のオープン競争も一緒に集計されている可能性もあります。

この点については、今後改良を検討しています。
また、上り3Fの部分が 新潟芝外回りのように平坦で直線だけのコースもあれば、中山芝コースのようにカーブと急坂があるコースもあります。
同じ上り3Fのラップでも、コースによって速いラップの出やすさも変ってくる事も付け加えておきます。

(U−3)ラップ差

ラップバランスを見るために、ラップ差(δ ; Lap Time Difference を考えます。その定義は

ラップ差 δ ;= (前半3F) − (上り3F)

ラップ差は、前半よりどれだけ速い上りを使えたか(使うのが理想か)という数値になります。
数値がプラス方向ならば速い上り、マイナス方向ならば遅い上り(すなわち、速い先行力)となります。
特に短距離戦のラップバランスを見るのに使います。

「difference」の頭文字「d」をとって、ギリシャ文字「δ(デルタ)」で表記します。

(U−4)85%信頼区間

上で述べた理想ラップですが、平均を算出したものなので、サンプルがバラついている場合、その信頼度は落ちます。
そこで 
85%信頼区間(85% Confidence Interval を考えます。
85%信頼区間は、「推定で85%のサンプルがその区間内に入っている」範囲を示しています。

例えば、上の東京芝1800mの例で、理想ラップとその85%信頼区間は
36.6 (35.5 〜 37.6) - 36.9 - 34.7 (33.4 〜 36.0)
δ= 1.9 (-0.3 〜 4.0)
となり、前半3Fの理想ラップが36.6、85%信頼区間が 35.5 〜 37.6、上り3Fの理想ラップが34.7、85%信頼区間が 33.4 〜 36.0 となります。

85%信頼区間の範囲によって、理想ラップの信頼度が変わります。

85%信頼区間の範囲 サンプルのばらつき具合 理想ラップの信頼度
広範囲 バラついている(不安定) 低い
狭範囲 バラついてない(安定) 高い

上の例で、上り3Fの85%信頼区間が 33.4 〜 36.0 と広範囲になっているのは、範囲を大きく取らないと サンプル数の85%を確保できないためで、該当サンプルがバラついている事を物語っています。

また、前半3Fと上り3Fのラップが 共に理想ラップの85%信頼区間内に入っていることを「
理想ラップをクリアしている」と表現します。


(V)理想ラップ理論で使われるその他の言葉の定義

・先行力
前半3Fで速いラップタイムを使えること

・中盤力
中盤のラップで速いラップタイムを使えること

・決定力
上り3Fで速いラップタイムを使えること
一般的には「瞬発力」という言葉を使われる場合が多いですが、個人的に「瞬発力」は短時間でトップスピードに乗る力を連想してしまい その言葉を使うのは違和感があります。
そこで、「上り3ハロンの決め手」の語句から、本論では「決定力」という言葉を使います。

・前傾ラップ
上り3Fよりも前半3Fの方が速いラップ (δ< 0)

・後傾ラップ
前半3Fよりも上り3Fの方が速いラップ (δ> 0)